『箱庭の国』のつくりかた【ボード編】

 

こんにちは。
今週の空理通信です。

今回は、ボードゲーム『箱庭の国』の作り方、第一弾「駒の作り方」に続きまして、第二弾。
「ボードの作り方」をお送りします。

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ボードゲームであるからには必要になる、ボード。
これはゲームの中で最も大きなコンポーネントなだけに、プレイ体験を支える大切な部材といえます。

ボードの自作には、色々なアプローチがあるかと思います。
素材チョイスひとつをとっても、ゲーム全体の雰囲気作り、プレイアビリティ、加工難度等々、考えるべきことは色々あります。

それでは、今作のボードづくりの背景には、一体どんな過程があったのでしょうか?
しばしお付き合いください。


 

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ボードの試作品は、はじめ厚紙で製作しました。
まずはボードのスケール感を、手にとれる形にして確認するためです。

このゲームでは、コマをオーブン粘土で作っており、この時すでに、焼物の試作品はできていました。
そしてこのあと、もっと厚いボール紙に面貼りし、それをゲームとして発表する予定でした。
…しかし、上の写真のようにして遊んでみて、少々違和感を覚えました。

焼き物のコマと厚紙のボードとが、取合わせとしてすんなり収まるのでしょうか?
実用上の観点からいけば、紙は磨耗しやすい素材であり、焼き物は摩擦の大きい素材ですので、印刷が剥げるのは確かに早そうです。

しかし、何より気になったのは、「音」と「手触り」でした。

ごく個人的な感覚なのですが、ボードゲームで遊ぶとき、結構印象に残るのが、「音」と「手触り」なのです。
それらは時として、絵や文字といった視覚的情報よりも強く思い出されます。
その理由は、そうした要素が、ゲームの内容と「直接的には関わっていない」からだと思います。
つまり「感じられた情報」が「解釈された情報」によって上書きされないからこそ、印象に残るのではないでしょうか。
そして、そういった「印象」というものは、人によっては(もちろん、私にとっても!)ゲームの価値を決める上で大変重要なことに思えるのです。

そうしてみると、焼物のコマと紙製のボードが触れるときの、「コツッ」とした感じは、どうもいい印象を残さないように感じました。
もうすこし、やわらかな感触のボードのほうが良いように思えたのです。

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そこで次に試した素材が、布地でした。
用意したのは、フェルトと合皮。
この時点では、どちらも百均で手に入るものを使っています。

布地には、盤面をプリンターでプリントする訳にもいかないので、ここはスタンプでひとマスひとマス押していくことにしました。

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スタンプは、ゴム版で自作してみました。
植物っぽい模様をあちこちから探し出し、好みに応じてアレンジ、そしてちまちま彫ります。
布用のスタンプインク探しには難儀しましたが、百均にて「万能スタンプ」なるものを発見。
あらゆる素材に使えるということで、こいつはコマの色づけにも活躍しました。

しかし、いざ押してみると、フェルトは思いのほか毛羽立ちが強く、指で撫でるだけでインクが落ちてしまうことが発覚。
(ちなみに、そのような素材にインクを乗せるなら、本来はシルクスクリーンでプリントするのが正解です。設備さえ揃えれば、スタンプより、実はそちらのほうが印刷自体は簡単かと思います。)

結果、素材は合皮に決定しました。
インク乗りも問題ないようです。
ただもちろん、百均だと材質がチープですので、ネットでもっといいものを探します。

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運命の出会い!サンプル発注した最初の素材に一目惚れ。
銀河工房の「ビアンコ」という布地です。
材料の調達は早いに越したことはないので、すぐに発注します。
ちなみに赤をチョイスした理由は、駒が溶け込まない色であることと、力強く、印象に残る色であることの二点だったのですが、結果的にはこの色が、ゲーム全体のイメージカラーともなりました。


次に、ボードの加工手順について説明していきます。

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まずは、発注単位のせいでやたらとでかい生地を、だいたい22cm角に切り出す作業。

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生地の裏のフェルト面に、ふすまを定規代わりに鉛筆でガイドを引いていきます。
(もちろん、大きな定規があれば、それに越したことはありません。)
そして、その線に沿って少しずつカッターで切り出します。
はじめは帯状に切り出し、次に別作業で四角くカットしていく形です。

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ボードは、ここでは少し大きめに取っており、この工程ではあまり精密に切り出さず、あとで寸法を揃えることにしています。

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寸法揃えには、カールの裁断機を使いました。
裁断機を使うメリットは、カットの真っ直ぐさと角の垂直さが保証されることです。
定規とカッターで切ると、どちらも心もとないうえ、場合によってはやや手間なのです。
そのような訳で、この機械はカード作りの場面でも大いに活躍しています。
(むしろ、こんなに厚い布も切れるということが今回の発見でした。)

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さらには、切り口が綺麗に仕上がるというおまけつき。
(写真の左が裁断機、右がカッター)
これは、刃が円形なため、カッターのように引いて切るというよりは、押して切る感じになるためです。

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さいごに、盤面のマス目などをスタンプで押していきます。
ポイントは、カッターマットにガイド目印をつけておくこと。
そこに合わせて定規を当て、さらに定規にもつけておいたガイドに合わせて、スタンプを押していきます。

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色の検証もしてみました。
黒のほうが見やすそうでしたので、最終的にはそちらが完成版で採用されました。

…以上で、ボードは完成です!


また長い記事になってしまいました…

さて今回の場合、ボードには厚みがあり、風合いがあり、駒に耐える頑丈さ、そして、頑丈さとはまた別の、ある種の「力強さ」があった方がいいと感じていました。
これは、駒の「物質感」に負けない「素材感」が必要という意味でもあります。

フェイクレザーという素材も、スタンプという印刷手段も、そうした要求から引き出され、ゲームの雰囲気を決定する一要素として、うまく機能したと思います。

何にせよ、今回のことで、試作には時間をかけられるだけかけるということが大事だと学びました。

また、たとえば単純に機能的要求から決定したボードの色がゲームのイメージカラーとなったように、はじめから決まっていたことだけでなく、作業の中で生まれたことが、ときに最終形の決定を促すと実感出来たことも、大きな収穫でした。


ここまで長々お付き合い頂き、ありがとうございました。
それでは、また次回の更新にて!

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